【下肢の運動器リハ】足部・足関節に対する運動器リハの実際
こんにちは。だいじろうです。
ここでは足部・足関節に対する運動器リハの実際について解説していきます。
足部・足関節の解剖や機能の理解を深めていき、その知識を活かした評価や徒手療法、運動療法について解説していきます。
ぜひ足部・足関節の運動器リハの参考にしていただければと思います。
- 【目次】
- 1.足部・足関節の運動器リハ:解剖
- 骨 / 関節 / 靱帯 / 筋 / 神経 / 脈管系
- 2.足部・足関節の運動器リハ:機能
- 背屈運動 / 底屈運動 / 内がえし運動/外がえし運動 / 足部内転・下腿外旋 / 足部外転・下腿内旋 / 内側縦アーチ / 外側縦アーチ / 横アーチ / トラス構造・ウィンドラス機構 / 荷重への応答 / 後足部からの運動連鎖 / クロスサポートメカニズム / げんこつ機能 / 長短腓骨筋の共働筋機能 / 長腓骨筋・長母趾屈筋の共働拮抗筋機能 / 長趾屈筋・足底方形筋の関係性
- 3.足部・足関節の運動器リハ:評価
- レントゲン所見の見方 / 圧痛検査 / 可動域検査 / 関節不安定性テスト / タイトネステスト / 筋機能評価 / アライメント評価
- 4.足部・足関節の運動器リハ:徒手療法
- 足趾屈曲可動性への介入 / 足部牽引アプローチ / 足づくり / 背屈可動性への介入 / 長母趾屈筋への介入 / 下腿三頭筋ストレッチ
- 5.足部・足関節の運動器リハ:運動療法
- 下腿三頭筋ストレッチ / 背屈筋群エクササイズ / 足趾グーパーエクササイズ / タオルギャザー / 足部8動作エクササイズ / 腓骨筋エクササイズ / 後脛骨筋エクササイズ / カーフレイズ / ツイスティング / 足底筋リリース
- 6.足部・足関節の運動器リハのまとめ
足部・足関節の運動器リハ:解剖
運動器リハを実践していく上でとくに重要となる足部・足関節の解剖について解説していきます。
まず用語の確認をしておきます。
足部・足関節は下腿部・後足部・中足部・前足部に分けられます。
それぞれの範囲は以下の通りです。
- 下腿部:距腿関節より近位
- 後足部:距腿関節からショパール関節(距踵舟関節・踵立方関節)まで
- 中足部:ショパール関節からリスフラン関節(足根中足関節)まで
- 前足部:リスフラン関節より遠位
それぞれの部位ごとに骨・関節・靱帯・筋を解説していき、その後、臨床上知っておくべき神経や脈管系についても解説していきます。
骨
まずは骨について。
足部・足関節は以下のような骨によって構成されています。
- 脛骨
- 腓骨
- 距骨
- 踵骨
- 舟状骨
- 楔状骨
- 立方骨
- 中足骨
- 基節骨
- 中節骨
- 末節骨
それぞれについて解説していきます。
距腿関節の下腿部は、脛骨(Tibia)の内果と天蓋、腓骨(Fibula)の外果で距腿関節で構成されています。
ほぞ穴構造となっており、そこに距骨滑車がはまり込むことで足関節の底背屈運動が可能となります。
特徴としては外果の方が内果より下方まで位置し、外側支持を強固なものとしています。
また外果下端と内果下端を結ぶ線が足関節底背屈運動軸となり、この外果下端の方が下方に位置することで、底屈時に内反を伴いやすい構造となっています。
さらに外果は内果よりも少し後方に位置しており、前額面に対して5度程度外方を向きます。
この角度は足部に対する下腿部のアライメントを評価する上で、重要な指標となります。
距骨はTalusといい、筋が付着しない骨として有名です。
距骨の部位としては、距骨頭・距骨頚・距骨体に分けられます。
距骨頭部・距骨頚部では舟状骨や踵骨との関節面を構成しています。
距骨体部には距骨滑車があり、その内側面では内果と関節を構成し、外側面では外果と関節面を構成しています。
舟状骨関節面は凸面構造をしています。
距骨滑車は前方の方が幅が広く、後方の方が幅が狭くなっており、この構造上の特徴によって足関節背屈時にClosed pack positionとなり、足関節底屈時にLoosed pack positionとなります。
距骨体部の後方には内側突起と外側突起があり、その間には長母趾屈筋が通過する長母趾屈筋腱溝があります。
この外側突起部分の副骨が三角骨となり、サッカー選手やバレリーナでは三角骨障害の要因となります。
踵骨はCalcaneusといい、距骨を支える構造をしており、距骨・舟状骨・立方骨と関節を構成します。
踵骨隆起があり、その上部にはアキレス腱が付着します。
また解剖学的な名称はありませんが、踵骨の外側部には突起があり、私は外側突起と勝手に読んでいます。
この外側突起と外果の間を腓骨筋群が通過するため、ある種のランドマークとなっていると考えています。
そして前方の立方骨関節面は凹面構造をしており、その上部は踵骨前方突起と呼ばれ、この部位は二分靱帯(Y靱帯)の付着部で、長距離ランナーなどが疲労骨折を起こすことで知られています。
内側部には主に距骨を支える部位として載距突起があり、その底側面には長母趾屈筋腱溝があります。
載距突起には三角靭帯の浅層線維や底側踵舟靱帯(スプリング靱帯)が付着します。
距骨の舟状骨関節面が凸面構造をしているのに対して踵骨の立方骨関節面が凹面構造をしていることと、それぞれの運動軸が交差することから、ショパール関節は可動性に富む関節ではありません。
ですが、後述する後足部のアライメントによっては可動性が増加したり、低下したりするという特性があります。
踵骨隆起の内側縁・外側縁の傾斜はLeg-Heel Alignmentの指標となります。
距骨関節面は前・中・後に分かれており、それぞれ複雑な形状をしているため、距骨下関節も可動性に富む関節ではありません。
また距骨下関節の関節面の構造は個体差があるともされているため、どの程度の可動性があるかを一般化していくことは他の関節と比べると難しいのかもしれません。
踵骨隆起の底部は内側突起と外側突起とに分かれており、短指屈筋・母指外転筋・小趾外転筋・足底方形筋・足底腱膜が付着します。
中足部は、舟状骨(Navicular)・楔状骨(Cuneiform)・立方骨(Cuboid)で構成されており、楔状骨には内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨とがあります。
舟状骨の内側には舟状骨粗面があり、この部位の副骨が外脛骨となります。
3つの楔状骨でほぞ穴構造を構成し、そこに第2中足骨がはまり込む構造となっています。
さらに中間楔状骨をトップとしたアーチ構造によって、この第2中足骨との関節の剛性が高められていることから、第2列が横アーチのトップとされています。
立方骨の底側面には立方骨粗面があり、その前方には長腓骨筋が通過する長腓骨筋腱溝があります。
前足部は、第1〜5中足骨(Metatarsal)、第1〜5基節骨(Proximal Phalanx)、第2〜5中節骨(Middle Phalanx)、第1〜5末節骨(Distal Phalanx)からなります。
中足骨と基節骨は、頭部・体部・底部で構成されています。
第5中足骨底には、短腓骨筋が付着する第5中足骨粗面があり、Jones骨折の発生部位となっています。
また第1中足骨頭の底側面には外側と内側の2つの種子骨があるのが特徴です。
内側種子骨には母趾外転筋と短母趾屈筋が付着し、外側種子骨には母指内転筋と短母趾屈筋が付着します。
この2つの種子骨の間を長母趾屈筋が走行することとなります。
関節
続いて足部・足関節を構成する関節についてみていきましょう。
足部・足関節は以下のような関節によって構成されています。
- 遠位脛腓関節
- 距腿関節
- 距骨下関節
- 距踵舟関節
- 踵立方関節
- 楔舟関節
- 足根中足関節
- 中足趾節関節
- 基節骨
- 中節骨
- 末節骨
それぞれについて解説していきます。
まず足関節は遠位脛腓関節(Distal tibiofibular jt)と距腿関節(Talocrural jt)とで構成されています。
遠位脛腓関節は脛骨と腓骨からなる2つの脛腓関節のうち、遠位に位置する関節です。
足関節の運動に伴い、腓骨は挙上/下制、外転/内転、外旋/内旋の動きをするとされています。
ですが、体感的には脛骨に対して腓骨が前後にスライドするような動きが感じ取れるかと思います。
距腿関節は脛骨と腓骨、距骨で構成される関節で、脛骨と腓骨からなるほぞ穴に距骨滑車がはまり込む構造となっています。
距骨滑車が前方が広く、後方が狭い構造となっていることから、背屈時にClosed pack positionとなり、底屈時にLoosed pack positionとなります。
そのことから底屈時に足関節を捻挫しやすくなり、背屈時に捻挫した場合には腓骨や脛骨などの骨折を伴うことが多くなると考えられます。
また外果下端が内果下端よりも下方にあることから、外側部は骨性支持が得られるため、内反捻挫の方が多いとされています。
実際に足関節捻挫では内反捻挫が9割以上という報告が多く、外反捻挫の場合は骨折を伴うことが多いとされています。
距骨下関節(Subtalar jt:ST関節)は距骨と踵骨で構成される関節で、前・中・後の3つの関節面をもちます。
それぞれの関節面が特異的な構造をしていることから、他動的に動かすことが非常に難しい関節となります。
またそれぞれの関節面の構造が個体差が大きいとされているため、他の関節と比べると可動性が一般化されていないという特徴もあります。
横足根関節・ショパール関節(Transverse tarsal jt)は距踵舟関節(Talocalcaneonavicular jt)と踵立方関節(Calcaneocuboid jt)からなり、距骨・踵骨・舟状骨・立方骨とで構成されています。
いわゆる後足部と中足部とを分ける関節です。
距骨の舟状骨関節面が凸構造を、踵骨の立方骨関節面が凹構造をしており、さらにそれぞれの関節の運動軸が交差することから、ショパール関節自体の可動性はそれほど大きいものではありません。
ですが、後足部が回内位となるとこの2つの運動軸が並行となり可動性が大きくなります。
逆に後足部が回外位となるとこの2つの運動軸がさらに交差するため可動性が乏しくなります。
つまり、後足部が回内位を呈すると足部は柔らかい足となり、後足部が回外位を呈すると足部は硬い足となるということです。
また後足部が回内位を呈すると踵立方関節面において立方骨が下方に偏位しやすい構造となることも柔らかい足になることにつながります。
楔舟関節(Cuneonavicular jt)は舟状骨と外側・中間・内側の楔状骨との関節になります。
3つの関節からなる複合関節と捉えられるので、ここも可動性は乏しいものとなります。
リスフラン関節は足根中足関節(Tarsometatarsal jt)と呼ばれ、足根骨(立方骨・楔状骨)と中足骨とで構成されています。
細かくみていくと、内側楔状骨と第1中足骨が、中間楔状骨と第2中足骨が、外側楔状骨と第3中足骨が、立方骨と第4・5中足骨が関節を構成しています。
そのなかでも中間楔状骨と第2中足骨との関節は内側楔状骨と外側楔状骨との間にはまり込むようなほぞ穴構造となっており、さらにその関節を内側・外側楔状骨が下方から支えるような構造となっていることから、中間楔状骨と第2中足骨との関節は剛性が高い構造となっています。
そういった構造的特徴から、第2列が足部の長軸として捉えられ、横アーチのトップを構成することとなっています。
また第5中足骨粗面に短腓骨筋が付着することから、立方骨と第5中足骨との関節は臨床上非常に重要な関節とされています。
中足趾節関節(Metatarsophalangeal jt:MP関節)は、中足骨と基節骨とで構成されており、中足骨頭側が凸、基節骨底側が凹の関節です。
屈曲・伸展の大きな可動性を有する関節ですが、臨床上は屈曲可動性が低下しやすいという特徴があります。
これは履物や歩行動作の影響で、伸展方向に動く機会が多く、屈曲方向に動く機会が少ないことが影響していると考えられます。
趾節間関節(Interphalangeal jt:IP関節)は、基節骨・中節骨・末節骨とで構成される関節で、第1趾以外の足趾では近位(Proximal)と遠位(Distal)の2つがあります。
小さな関節ではありますが、足部アーチを支える足趾筋群が作用するためにはこの関節の可動性も重要な役割を担っています。
靱帯
つぎは足部・足関節の靱帯についてみていきます。
足部・足関節には多くの靱帯がありますが、臨床上重要な靱帯として以下のものがあります。
- 前下脛腓靭帯
- 前距腓靱帯
- 踵腓靱帯
- 後距腓靱帯
- 二分靱帯
- 三角靭帯
- 底側踵舟靱帯
それぞれについて解説していきます。
前下脛腓靭帯(Anterior Inferior Tibio Fibular Lig:AITF)は遠位脛腓関節の前方に位置している靱帯です。
足関節が背屈し距骨が脛骨と腓骨にはまり込んだときに、脛骨と腓骨が離開しないように制動しています。
また脛骨と腓骨によってつくられているほぞ穴構造の外側部分を覆い、距腿関節の適合性を高める役割も担っています。
前距腓靱帯(Anterior Talo Fibular Lig)は外果と距骨を結ぶ靱帯で、足関節の外側支持機構として代表的な靱帯となります。
とくに底屈位での安定性に寄与する靱帯で、足関節捻挫で最も損傷されやすい靱帯です。
前距腓靱帯が損傷されるとき、外果付着部で損傷する場合と距骨付着部で損傷する場合、それらの間の実質部で損傷する場合とがあるので、圧痛をみる際にはそれぞれをチェックすることが大切です。
前距腓靱帯が損傷されると、底屈位での内反不安定性が生じるだけでなく、中間位での足部に対する下腿の外旋不安定性(下腿に対する足部の内転不安定性)が生じることが考えられます。
踵腓靱帯(Calcaneo Fibular Lig)は外果と踵骨を結ぶ靱帯で、前距腓靱帯とともに外側支持機構として代表的な靱帯です。
前距腓靱帯が底屈位で損傷されやすいのに対して、踵腓靱帯は中間位〜背屈位で損傷されやすいとされています。
ですが、臨床的には足関節を捻挫したとき、どのように捻ったかを的確に覚えているケースは少ないため、足関節捻挫を受傷した症例ではすべての靱帯の圧痛をみることが求められます。
踵腓靱帯は外果下端から後下方に走行しますが、書籍によっては踵腓靱帯が外果下端から下方に走行し、踵腓靱帯の部位に後距腓靱帯が記載されているケースもありますのでご注意ください。
後距腓靱帯(Posterior Talo Fibular Lig)は外果と距骨を結ぶ靱帯で、足関節後面に位置しています。
この靱帯は背屈位で損傷するとされていますが、周囲の軟部組織の影響もあり、はっきりとした病態の評価は難しいと考えます。
前距腓靱帯・踵腓靱帯・後距腓靱帯をまとめて足関節外側靭帯と呼ばれています。
二分靱帯(Bifurcated Lig)は踵骨前方突起と立方骨・舟状骨とを結び、その形状からY靱帯と呼ばれています。
臨床的には、とくに踵立方関節の安定性に寄与することが考えられています。
はっきりとした受傷起点がなくても同部位に腫脹がみられるケースも少なくありません。
圧痛が無かったとしても同部位の腫脹がある場合は、踵立方関節の不安定性を評価していくことも重要です。
三角靭帯(Deltoid Lig)は足関節内側靱帯とも呼ばれていますが、臨床的には4つの靱帯として評価していきます。
まず浅層の靱帯として内果下端と載距突起を結ぶ脛踵靱帯があり、その深層に内果と距骨体後部を結ぶ後脛距靱帯、内果と距骨頚部を結ぶ前脛距靱帯、内果と舟状骨とを結ぶ脛舟靱帯があります。
足関節捻挫後の内側靭帯の評価をする際には、これら4つの部位の圧痛をみることが大切です。
触知したり、圧痛をみたりすることができませんが、底側踵舟靱帯(Pantar Calcaneo Navicular Lig)も足部機能を捉えていく上で重要な靱帯となります。
スプリング靱帯とも呼ばれるこの靱帯は、載距突起底側面と舟状骨底側面とを結ぶ靱帯で、下方から距骨頭部を支える役割を担っている靱帯です。
この部位が損傷すると距踵舟関節の不安定性が生じ、扁平回内足を呈することが考えられています。
筋
続いて筋について。
まず外在筋について解説していきます。
足部・足関節の運動に関与する外在筋として以下のような筋があります。
- 前脛骨筋
- 長母趾伸筋
- 長趾伸筋
- 第3腓骨筋
- 長腓骨筋
- 短腓骨筋
- 腓腹筋
- ヒラメ筋
- 足底筋
- 後脛骨筋
- 長母趾屈筋
- 長趾屈筋
それぞれについて解説していきます。
【前脛骨筋:Tibialis Anterior】
起始:脛骨の外側面上部2/3、下腿骨間膜、下腿筋膜の最上部
停止:内側楔状骨の内側面・足底面、第1中足骨底の内側面
神経支配:深腓骨神経(L4、L5)
栄養血管:前脛骨動脈
【長母趾伸筋:Extensor Hallucis Longus】
起始:腓骨内側面の中央1/3、下腿骨間膜
停止:母趾の趾背腱膜および末節骨底
神経支配:深腓骨神経(L5)
栄養血管:前脛骨動脈
【長趾伸筋:Extensor Digitorum Longus】
起始:脛骨外側顆、腓骨頭、腓骨前縁、下腿骨間膜
停止:4本の腱に分かれ、第2〜5MP趾の趾背腱膜、第2〜5趾の末節骨底
神経支配:深腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:前脛骨動脈
【第3腓骨筋:Peronaeus Tertius】
起始:腓骨顆部の一部
停止:第5中足骨底
神経支配:深腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:前脛骨動脈
これらの筋は、前脛骨筋を主動作筋として、長母趾伸筋・長趾伸筋・第3腓骨筋を補助筋として、足関節背屈に作用します。
ウィンドラス機構をはじめとした足部機能が低下すると、足趾伸展が起こりやすくなることで、長母指伸筋や長趾伸筋が働きやすい環境となります。
その影響で、前脛骨筋が働きづらくなるため、自動運動時の足関節背屈可動域が低下しやすくなります。
足関節背屈および外反に作用する第3腓骨筋は欠損例も報告されています。
その作用を考慮すると、第3腓骨筋が欠損している例では足関節外側安定性に乏しいことがあるかもしれません。
解剖学的に分かれているわけではありませんが、臨床的には前脛骨筋の機能は内側線維と外側線維とで分けて評価することが重要です。
一般的には前脛骨筋の筋力を評価する際、舟状骨・楔状骨付近に抵抗をかけるかと思います。
この方法で評価して、前脛骨筋の筋力が”問題ない”と判断されても、外側線維を触知すると収縮していないケースがあります。
ですので、前脛骨筋の筋力を評価する際には、一般的な方法を内側線維の評価として用い、別法として立方骨付近に抵抗をかけて外側線維の評価も用いていくことをオススメします。
なぜ外側線維の収縮機能が低下するのかというと、長母指伸筋や長趾伸筋からの影響が考えられています。
実際にそれらの筋が重なり合う部分で前脛骨筋の走行に沿って2〜3cmのキネシオテープを貼付するだけで、前脛骨筋の外側線維の収縮力が高まるケースがあります。
前脛骨筋の外側線維が十分に収縮することで、距骨外側部の取り込みも適切に起こるようになり、より機能的な背屈運動が可能となります。
【長腓骨筋:Peronaeus Longus】
起始:腓骨頭、腓骨外側面の上部2/3
停止:内側楔状骨の足底面、第1中足骨底
神経支配:浅腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:腓骨動脈
【短腓骨筋:Peronaeus Brevis】
起始:腓骨外側面の下部1/2
停止:第5中足骨粗面
神経支配:浅腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:腓骨動脈
長短腓骨筋は足関節外反に作用し、外側安定性や外側縦アーチの支持において重要な役割を担っています。
さらに長腓骨筋は足底を通り、内側楔状骨や第1中足骨の足底面に付着するので、第1列に対して底屈・回内の作用ももちます。
これは内側縦アーチや横アーチの支持にも作用するため、長腓骨筋は足部アーチの支持に大きく寄与していることが考えられます。
では、それぞれの筋の機能の関係性についてみていきます。
短腓骨筋は外果の後下方を通過し第5中足骨粗面に付着するため、外果と第5中足骨底を近づけるような収縮力を発揮します。
この収縮力によって第5中足骨〜立方骨〜踵骨〜距骨〜外果の距離が近づけられるため、外側縦アーチの剛性を高めるように作用します。
長腓骨筋は立方骨下方を通過するため、外側縦アーチが低下することで長腓骨筋は働きづらくなることが考えられます。
そのため、長腓骨筋が十分に作用するためには短腓骨筋が十分に作用しておくことが重要です。
また長短腓骨筋の収縮力は外果(腓骨遠位部)を前方に押す作用があるため、これらの筋群の機能低下は足部に対する下腿外旋に関与することが考えられます。
【足底筋:Plantaris】
起始:腓腹筋の外側頭上部
停止:踵骨隆起
神経支配:脛骨神経(S1、S2)
栄養血管:膝窩動脈
【ヒラメ筋:Soleus】
起始:腓骨頭と腓骨頸の後面、脛骨ヒラメ筋線、ヒラメ筋腱弓
停止:踵骨隆起
神経支配:脛骨神経(S1、S2)
栄養血管:腓腹動脈、後脛骨動脈
【腓腹筋:Gastrocnemius】
起始:内側頭ー大腿骨内側上顆、外側頭ー大腿骨外側上顆
停止:踵骨隆起
神経支配:脛骨神経(S1、S2)
栄養血管:腓腹動脈、後脛骨動脈
足底筋は機能的にあまり話題に上がることはありませんが、前距腓靱帯再建術の際の再建靱帯の素材として用いられることがあります。
ただ、足底筋も第3腓骨筋同様、欠損例が報告されているので、ここでもそれほど重視されているわけではありません。
ヒラメ筋と腓腹筋は下腿三頭筋として足関節底屈に作用します。
これらの筋群は姿勢保持や歩行動作に関与するだけでなく、柔軟性が低下することで下肢アライメントに影響を及ぼすため、臨床上、非常に重要な筋として捉えれています。
これらの筋はアキレス腱という共同腱として踵骨隆起に付着します。
そのなかは捻れ構造になっており、ヒラメ筋が中央から内側にかけて付着し、その中央の付着部を覆うように外側に腓腹筋が付着するとされています。
この結果から言えることは、ヒラメ筋は底屈・内反機能をもち、腓腹筋は底屈・外反機能をもつということです。
これらの研究は未だ継続されているので、今後より細かい部分が分かってくるかもしれません。
【後脛骨筋:Tibialis Posterior】
起始:下腿骨間膜、脛骨と腓骨の隣接面
停止:舟状骨粗面、内側・中間・外側楔状骨、第2〜4中足骨底
神経支配:脛骨神経(L4、L5)
栄養血管:後脛骨動脈
【長母趾屈筋:Flexor Hallucis Longus】
起始:腓骨後面の下部2/3、下腿骨間膜の腓骨側
停止:母趾の末節骨底
神経支配:脛骨神経(L5〜S2)
栄養血管:腓骨動脈、後脛骨動脈
【長趾屈筋:Flexor Digitorum Longus】
起始:脛骨後面の中央1/3
停止:第2〜5末節骨底
神経支配:脛骨神経(L5〜S2)
栄養血管:後脛骨動脈
足関節後内側を通過する筋群として、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋があります。
足関節の底屈・内反に作用するとともに、足部機能においても重要な役割を担っている筋群です。
足関節底屈可動性が低下しているとき、教科書的には腓腹筋やヒラメ筋が問題視されることが多いと思いますが、臨床的には長母趾屈筋が要因となっているケースも少なくありません。
長母趾屈筋は距骨後面の内側突起と外側突起とで形成されている長母趾屈筋腱溝を通過します。
この特徴から、長母趾屈筋の柔軟性低下などが起こることで、距骨は前方に押されるようになります。
足関節背屈運動では距骨は前方に転がり、後方に滑ることが必要となりますので、長母趾屈筋の柔軟性はこの距骨の後方滑りを阻害するとされています。
その他にも長母趾屈筋は下腿外側後面に付着することから、足部が固定された状態では下腿を外旋させる作用があります。
詳しくは「機能」の項で解説しますが、臨床上、非常に重要な筋であると考えています。
またこれらの筋群は互いに関与していることが解剖から伺えます。
後脛骨筋は下腿遠位後面で、長母趾屈筋は舟状骨下面で、それぞれ長趾屈筋が浅層を通過しています。
これは長趾屈筋の柔軟性が低下したり、過剰収縮が起こったりした際に、圧迫されることで、後脛骨筋や長母趾屈筋の機能が低下することも考えられます。
これらの筋群は共同的に収縮することが多い筋ではありますが、この重なりを考慮すると介入として個別に収縮させることも有効かと考えます。
これらの筋群に対して徒手的に介入する際には、後脛骨筋や長趾屈筋であればアキレス腱内側部から、長母趾屈筋であればアキレス腱外側部から侵入していくことになります。
それらの腱や筋腹を捉えた上で足趾の運動を行わせることで、ターゲットとなる筋を捉えられているかどうか確認するようにしてください。
続いて内在筋について解説していきます。
足部の運動に関与する内在筋として以下のような筋があります。
- 短母趾伸筋
- 短趾伸筋
- 母趾外転筋
- 母趾内転筋
- 短母趾屈筋
- 小趾外転筋
- 短小趾屈筋
- 小趾対立筋
- 短趾屈筋
- 足底方形筋
- 虫様筋
- 背側骨間筋
- 底側骨間筋
それぞれについて解説していきます。
【短母趾伸筋:Extensor Hallucis Brevis】
起始:踵骨の背面
停止:母趾の趾背腱膜、母趾基節骨底
神経支配:深腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:足背動脈
【短趾伸筋:Extensor Digitorum Brevis】
起始:踵骨の背面
停止:第2〜4趾の趾背腱膜、第2〜4中節骨底
神経支配:深腓骨神経(L5、S1)
栄養血管:足背動脈
【母趾内転筋:Adductor Hallucis】
起始:斜頭ー第2〜4中足骨底、立方骨、外側楔状骨、横頭ー第3〜5MP関節、深横中足靭帯
停止:両頭の腱が合体し外側種子骨を経由して母趾基節骨底
神経支配:外側足底神経(S2、S3)
栄養血管:内側足底動脈、外側足底動脈、足底動脈弓、第1〜4趾の足底中足動脈
【短母趾屈筋:Flexor Hallucis Brevis】
起始:内側楔状骨、中間楔状骨、底側踵立方靱帯
停止:内側頭ー内側種子骨を経由して母趾基節骨底、外側頭ー外側種子骨を経由して母趾基節骨底
神経支配:内側頭ー内側足底神経(S1、S2)
外側頭ー外側足底神経(S1、S2)
栄養血管:内側足底動脈
【母趾外転筋:Abductor Hallucis】
起始:踵骨隆起の内側突起、足底腱膜
停止:内側種子骨を経由して母趾基節骨底
神経支配:内側足底神経(S1、S2)
栄養血管:内側足底動脈
【短小趾屈筋:Flexor Digiti Minimi Brevis】
起始:第5中足骨底、長足底靭帯
停止:小趾基節骨底
神経支配:外側足底神経(S1、S2)
栄養血管:外側足底動脈
【小趾対立筋:Opponens Digiti Minimi】
起始:長足底靭帯、足底部の長腓骨筋腱鞘
停止:第5中足骨
神経支配:外側足底神経(S1、S2)
栄養血管:外側足底動脈
【小趾外転筋:Abductor Digiti Minimi】
起始:踵骨隆起の外側突起と底面、足底腱膜、第5中足骨粗面
停止:小趾基節骨底
神経支配:外側足底神経(S1、S2)
栄養血管:外側足底動脈
【短趾屈筋:Flexor Digitorum Brevis】
起始:踵骨隆起の内側結節、足底腱膜
停止:第2〜5趾の中節骨底の側面
神経支配:内側足底神経(S1、S2)
栄養血管:内側足底動脈
【足底方形筋:Quadratus Plantae】
起始:踵骨隆起底面の内側縁・底側縁
停止:長趾屈筋腱の外側縁
神経支配:外側足底神経(S1〜S3)
栄養血管:外側足底動脈
【虫様筋:Lumbricales】
起始:長趾屈筋腱の内側縁
停止:第2〜5趾の趾背腱膜
神経支配:第1〜3虫様筋ー内側足底神経(S2、S3)、第2〜4虫様筋ー外側足底神経(S2、S3)
栄養血管:第1虫様筋ー内側足底動脈、第2〜4虫様筋ー外側足底動脈
【背側骨間筋:Interossei Dorsales】
起始:二頭に分かれ第1〜5中足骨のお互いに向かい合った面
停止:第1背側骨間筋ー第2基節骨底の内側、第2趾の趾背腱膜
第2〜4背側骨間筋ー第2〜4基節骨底の外側、第2〜4趾の趾背腱膜
神経支配:外側足底神経(S2、S3)
栄養血管:外側足底動脈、内側足底動脈、足底動脈、背側中足動脈1〜4、背面趾動脈
【底側骨間筋:Interossei Plantares】
起始:第3〜5中足骨の内側縁
停止:第3〜5基節骨底の内側、第3〜5趾の趾背腱膜
神経支配:外側足底神経(S2、S3)
栄養血管:外側足底動脈、足底動脈弓、第2〜4趾の足底中足動脈、背面趾動脈
神経
(準備中)
脈管系
(準備中)
足部・足関節の運動器リハ:機能
ここからは足部・足関節の機能について。
足部・足関節の機能のなかでも、とくに臨床において重要となるものを中心に解説していきます。
背屈運動
背屈運動時、腓骨は脛骨に対して挙上・外転・外旋の動きをします。
※内旋という知見もありますが、OKCかCKCかによって変わるかと思いますが、構造的には外旋する方が多いのではないかと考えてます。
加えて、下腿に対して距骨は前方に転がり、後方に滑ります。
背屈可動域が低下している場合では、これらの関節運動が制限されていることが多いかと思います。
また、荷重時の背屈可動域として下腿前傾角をチェックすることがあるかと思います。
もちろん下腿前傾角は重要なのですが、それはあくまでも足部アーチが保持されていること。
背屈可動域を重視するあまり、足部アーチを潰してしまうケースもあるので、注意してください。
底屈運動
底屈運動時には、下腿部に対して距骨が後方に転がり、前方に滑ります。
背屈と同じように、底屈可動域が低下している場合では、この関節運動が制限されていることが多いかと思います。
荷重時における底屈運動では、母趾球に荷重できているかどうかが重要です。
さらに言えば、足部の底屈も加わり下腿軸と中足骨軸が平行になると、より安定した底屈動作が獲得できるかと考えます。
内がえし運動/外がえし運動
内がえしや外がえしといった運動は複合運動となります。
内がえしは足底が内側を向く運動で、足関節底屈・内転、足部回外の複合運動で、外がえしは足底が外側を向く運動で、足関節背屈・外転・足部回内の複合運動です。
これらの関節運動自体は正常な可動性なのですが、各関節のいずれかの可動域が低下すると内がえしであれば足関節内反、外がえしであれば足関節外反での代償が起こります。
これらの可動性を評価する際には、足関節の内反や外反が起こっていないかどうかもチェックすることが大切です。
足部内転・下腿外旋/足部外転・下腿内旋
足部内転という動きは下腿に対して足部が内転している動きなのですが、これは足部に対して下腿が外旋しているということです。
逆に足部外転という動きは下腿に対して足部が外転していて、これえは足部に対して下腿が内旋しているということ。
こういったように関節運動は同じ動きでもみる視点によって表現が変わるので、視点を変えて関節運動を捉えていくことも臨床上重要かと思います。
内側縦アーチ
内側縦アーチは、踵骨・距骨・舟状骨・内側楔状骨・第1中足骨で構成されています。
その骨構造が、三角靭帯・底側踵舟靱帯といった静的支持機構や、前脛骨筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・長腓骨筋・母趾外転筋・母趾内転筋・短母趾屈筋・短趾屈筋といった動的支持機構によって支持されます。
運動学的にみていくと、踵骨と距骨が背屈し、舟状骨・内側楔状骨・第1中足骨が底屈・回内することで、内側縦アーチは高まります。
内側縦アーチは「舟状骨をアーチトップとする」と記載されているものが多いですが、正常では載距突起と舟状骨中央が同じ高さに位置することから、それらの中間にある距骨頭部(底側踵舟靱帯に載る部分)をアーチトップと捉えていってもいいのではないかと考えています。
外側縦アーチ
外側縦アーチは、踵骨・立方骨・第5中足骨で構成されています。
その骨構造が、踵腓靱帯・二分靱帯といった静的支持機構や、第3腓骨筋・短腓骨筋・長腓骨筋・長趾屈筋・足底方形筋・小趾外転筋・短小趾屈筋・小趾対立筋・短趾屈筋といった動的支持機構によって支持されます。
運動学的にみていくと、踵骨と距骨が背屈し、立方骨・第5中足骨が底屈・回外することで、外側縦アーチは高まります。
外側縦アーチのアーチトップは立方骨前方突起とされています。
横アーチ
横アーチは各種足根骨と中足骨とで構成されています。
その骨構造が靱帯による静的支持機構や、筋による動的支持機構によって支持されます。
舟状骨外側部・中間楔状骨・第2中足骨がそれぞれの部位でのアーチトップとされていますが、それらはいわゆる「第2列」に位置する部位となります。
荷重への応答
足部をみていく上では荷重への応答について考えておくことが非常に重要です。
これはなぜか書籍にもあまり明記されていないのですが、足部は「荷重ストレスのベクトルの向きと関節面が平行に近い」という人体のなかでも特殊な構造をしています。
要するに関節面が前額面・矢状面上に位置しているということ。
とくに荷重関節のなかで同様の特徴を有している関節はありません。
※広義の荷重ストレスでみると肩甲上腕関節も含まれます。
これが何を意味するというと、他の関節では荷重ストレスによって圧迫ストレスが生じますが、足部では曲げストレスやせん断ストレスが生じるということです。
さらに、曲げストレスが加わると、足部の関節の上方には圧縮ストレスが、下方には伸張ストレスが加わります。
これらのメカニカルストレスは各関節のアライメントや可動性、不安定性、筋機能にも影響することが考えられます。
足部においてはこの影響を踏まえた機能評価をしていくことが重要となります。
トラス構造・ウィンドラス機構
トラス構造とは建築用語で、三角形の構造が外力を分散し、剛性を高めてくれるというものです。
足部では踵骨隆起底部・距骨頭部・中足骨頭部によって三角形がつくられていることから、このトラス構造の特性を有していると考えられています。
また、近しい機能としてウィンドラス機構というものもあります。
これは足趾巻き上げ機構とも言われ、足趾伸展によって足部の剛性が高まる機能のことを指します。
足趾を伸展することで、足底腱膜や短趾屈筋が伸張されるため、踵骨隆起底部と中足骨頭を近づけるような力が生じます。
その力がそれぞれの骨を伝播することでアーチトップを高め、剛性を高めるような力に変化していきます。
ウィンドラス機構が機能する代表的な場面として、歩行時のヒールコンタクト時やヒールオフ時があります。
ヒールコンタクト時にはウィンドラス機構により足部剛性が高まり、荷重負荷への対応が可能となります。
またヒールオフ時にこのウィンドラス機構が働くことで、踵骨が背屈していきます。
それに伴って下腿三頭筋は伸張されるため、蹴り出し力が高まるとされています。
同時に足部剛性が高まっているため、その蹴り出し力を効率よく地面につたえることができるようになります。
こういった働きがあるため、このウィンドラス機構は足部機能のなかでも重要な役割を担っていると考えています。
後足部からの運動連鎖
臨床においては運動連鎖の考え方が用いられることが多いかと思いますが、足部においても運動連鎖は重要です。
足部では後足部からの運動連鎖を用いていきます。
後足部と中足部との間に位置する関節であるショパール関節は、距踵舟関節と踵立方関節で構成されています。
それらの関節の運動軸の位置関係は後足部のアライメントによって変化します。
後足部が回内位を呈すると、運動軸が平行に近くなるため、可動性が大きくなります。
可動性が大きくなるということは、「可動性に富む足」もしくは「緩い足」となります。
逆に後足部が回外位を呈すると、運動軸が交差するため、可動性が乏しくなります。
可動性が乏しくなるということは、「剛性の高い足」もしくは「硬い足」となります。
足部の機能を捉えていく上では、この後足部のアライメントからの運動連鎖を考慮することが重要です。
クロスサポートメカニズム
クロスサポートメカニズムは長短腓骨筋と後脛骨筋によって後足部を安定させるメカニズムです。
底屈位と背屈位で作用する機能で、長短腓骨筋と後脛骨筋が後足部を両側からサポートします。
歩行時のヒールオフ以降にクロスサポートメカニズム(長短腓骨筋と後脛骨筋の求心性収縮)によって後足部が安定することによって下腿三頭筋の収縮効率が高まります。
また立ち上がり動作の下腿前傾(足関節背屈)が起こる際にはクロスサポートメカニズム(長短腓骨筋と後脛骨筋の遠心性収縮)によって後足部が安定することで、機能的な下腿前傾動作が得られることとなります。
げんこつ機能
足部においても手と同じようなげんこつ機能があります。
矢状面・前額面からそれぞれ解説していきます。
矢状面ではいわゆる屈曲機能となります。
踵骨、距骨、舟状骨、内側楔状骨、第1中足骨、第1基節骨、第1末節骨でつくられるラインが舟状骨をトップとしてアーチ状に屈曲していきます。
後足部は背屈し、中足部〜前足部は底屈することで、この機能が保たれます。
また前額面では中足骨頭でつくられるラインが第2中足骨頭をトップとしてアーチ状に屈曲していきます。
内側列(第1列)は回内し、外側列(第3〜5列)は回外することで、この機能が保たれます。
この機能は足部の可動性が確保された上で、内在筋・外在筋が十分に作用することが必要となります。
長短腓骨筋の共働筋機能
長腓骨筋と短腓骨筋は足関節外反筋として知られていますが、それらは共同的に働いています。
短腓骨筋は第5中足骨底と外果を近づけるように作用しするため、第5中足骨〜立方骨〜踵骨〜距骨〜外果間の剛性を高める機能を有します。
この部位の剛性が高められるということは外側縦アーチが保持されることになります。
長腓骨筋が機能するためには、この外側縦アーチが保持されることが非常に重要です。
外側縦アーチが保持されると立方骨が適切なアライメントを維持できます。
長腓骨筋はその立方骨の下方を通過し内側楔状骨・第1中足骨底に付着します。
外側縦アーチが低下し立方骨も低下してしまうと、長腓骨筋が下方に押されてしまうことで機能しづらくなってしまいます。
つまり長腓骨筋が十分に機能するためには短腓骨筋が十分に機能しておく必要があります。
長母趾屈筋・長腓骨筋の共働拮抗筋機能
また長腓骨筋の機能は長母趾屈筋の機能とも深く関係をもちます。
長母趾屈筋は第1列の底屈に作用し、長腓骨筋は第1列の底屈・回内に作用します。
また足部が固定された状態では、長母趾屈筋は下腿外旋に作用し、長腓骨筋は下腿外旋を制動します。
このことから、長母趾屈筋と長腓骨筋は共同的にも作用しますし、拮抗的にも作用するということが考えられます。
この関係性は臨床でも非常に重要な役割を担っています。
長趾屈筋・足底方形筋の関係性
足底方形筋はその解剖の特徴から、長趾屈筋の機能に影響していることが考えられます。
足底方形筋は踵骨隆起後面に起始をもち、長趾屈筋の小趾腱に付着します。
足底方形筋の収縮は長趾屈筋の小趾腱を後外方に引くため、長趾屈筋の収縮が小趾の屈曲に作用するようになります。
足部外側の安定性にはこの足底方形筋の作用が非常に重要な役割を担っています。
足部・足関節の運動器リハ:評価
続いて、足部・足関節の評価について解説していきます。
機能評価では前述した機能が十分に働いているかどうかを把握することが目的ですので、教科書的な方法・注意点だけでなく、それぞれの機能を踏まえて工夫していきます。
レントゲン所見の見方
足関節のレントゲンでは主に距腿関節の適合性をチェックしていきます。
内反不安定性がある場合は下の画像のように距腿関節の外側が離開しているケースがあります。
内反不安定性があれば必ず外側が離開するというわけではありませんが、外側が理解している場合は内反不安定性があると予測できます。
足関節内反捻挫は、外果の剥離骨折などを合併する場合があります。
外果の剥離骨折はレントゲンでも把握できることもあるので、外果部のラインを見ておくことも重要です。
外反不安定性がある場合は三角靭帯が損傷しているため、距腿関節の内側部にスペースができます。
また足関節捻挫のなかでは前下脛腓靭帯を損傷することもあります。
前下脛腓靭帯を損傷した場合は、遠位脛腓関節の離開が確認できます。
足関節内反捻挫ではその名の通り内反不安定性が注目されます。
ですが、足関節内反捻挫で主に損傷されやすい前距腓靱帯は足関節中間位では前方不安定性を制動する役割を担っています。
ですので、レントゲン上で下腿に対して距骨が前方に偏位している場合は前距腓靭帯損傷が疑われます。
またレントゲン上で見逃されやすいものとして、脛骨内果疲労骨折と踵骨前方突起骨折があります。
脛骨内果疲労骨折はMRIやCTで確定診断がつけられますが、レントゲンでも脛骨内果の関節面からの骨折線が確認されることがあります。
下の図の部分もチェックしておくことで見逃しを防止できます。
踵骨前方突起骨折は捻挫後にも起こりえますし、慢性外傷としても起こりえます。
こちらもレントゲン上、見逃されやすい疾患ですので、下の部位をチェックするようにしましょう。
圧痛検査
続いて、圧痛検査について解説していきます。
圧痛は主に組織の損傷の有無を判断していく際に用いられますが、炎症所見が著明な場合は組織の損傷による圧痛か炎症による圧痛かが判別つきづらいケースもあるので、注意してください。
また組織は当然ながら一点ではなく幅や長さがあります。
ですので、組織によっては一点だけでなく複数部位の圧痛を確認することでより正確な評価が可能となります。
もちろん触察スキルがベースとなりますので、しっかりとした触察スキルを身につけるようにしましょう。
※触察について学びたい方はこちらをご検討ください。
明日からの臨床に活かす!触察セミナー
評価やアプローチの精度を高めてくれる触察スキルについてのセミナーです。基本的な触察の考え方から実際の方法まで解説しています。
足部・足関節の外側部では、前下脛腓靭帯、前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯、二分靱帯の圧痛を確認していきます。
前下脛腓靭帯では脛骨付着部と腓骨付着部の圧痛をみて、前距腓靱帯では距骨付着部と距骨付着部だけでなく実質部の圧痛もみるようにします。
要因は明らかになっていないと思いますが、これらの靱帯は同じ靱帯損傷でも損傷される部位が異なるケースがあります。
とくに前距腓靱帯では距骨付着部や実質部の損傷が認められると関節包の損傷も合併しているケースもあり比較的予後不良となる印象があります。
内側部の靱帯は一般的には三角靭帯と一括に表現されることが多いですが、実際には浅層部の脛踵靱帯、深層前部の脛距靱帯・脛舟靱帯、深層後部の脛距靱帯で構成されています。
圧痛を評価する際には、これらの靱帯それぞれの圧痛を確認しておくことが重要です。
また足関節捻挫は内反捻挫と外反捻挫とに分けられ、内反捻挫では外側部の靱帯が、外反捻挫では内側部の靱帯が損傷するとされています。
ですが、臨床的には受傷機転がはっきりしていないケースもありますし、外側部と内側部の靱帯を複合的に損傷するケースも少なくありません。
ですので、実際に評価する際には外側部と内側部の靱帯すべての圧痛を確認する必要があります。
靱帯以外の圧痛ポイントについて解説していきます。
踵骨前方突起部はスポーツ選手が疲労骨折を起こす部位となりますので、足関節前外側部の疼痛を訴えるケースではこの部位の圧痛・叩打痛を確認しておきます。
後脛骨筋が付着する舟状骨粗面は外脛骨障害の評価として圧痛を確認します。
外脛骨が存在する場合、舟状骨と外脛骨は線維性の結合(Fibrous Union)をもっています。
外脛骨障害の病態はこの線維性結合の破綻に起因しますので、この部位の圧痛を評価します。
臨床的には背側・底側・前方・後方のいずれも圧痛が確認されることがあるので、それぞれの圧痛を確認していきます。
アキレス腱の圧痛も複数箇所をチェックしていくことが重要です。
踵骨付着部と実質部をみていきますが、それぞれ内側部・中央部・外側部の圧痛を確認していきます。
後足部が回内位を呈すると内側部の伸張ストレスが増大しますし、後足部が回外位を呈すると外側部の伸張ストレスが増大します。
中央部の圧痛がある場合は、シンプルに下腿三頭筋のタイトネスが要因となっていることが多い印象です。
このように同一の組織における圧痛であっても、その部位の違いによって発生メカニズムが異なることがあるため、発生メカニズムを予測するために非常に有用な評価となります。
足底部の圧痛では踵骨隆起底側面と種子骨を確認していきます。
踵骨隆起の底側面には足底腱膜が付着します。
足部の機能不全によって足底腱膜からの伸張ストレスが増大すると足底腱膜炎や踵骨骨棘障害を呈し、この部位の圧痛が生じるようになります。
また種子骨障害を呈するケースでは種子骨部分の圧痛が生じます。
内側種子骨・外側種子骨それぞれの圧痛を確認するようにしましょう。
可動性検査
続いて可動性の評価について解説していきます。
こちらも日整会の可動域測定の方法だけでなく、足部・足関節機能を踏まえた評価方法について解説していきます。
▶足関節底屈可動性
▶第1列可動性
▶げんこつ可動性
▶ウィンドラステスト
関節不安定性テスト
▶足関節内反不安定性
▶足関節前方不安定性
▶足関節外反不安定性
▶内側列不安定性
▶外側列不安定性
筋機能評価
▶前脛骨筋機能
▶後脛骨筋機能
▶短腓骨筋機能
▶長腓骨筋機能
▶下腿三頭筋機能
▶げんこつ筋機能
▶足趾趾噛み機能
アライメント評価
▶距腿関節アライメント
▶Leg Heel Angle
▶Leg Heel Alignment
▶内側縦アーチアライメントテスト
内側縦アーチの大まかな指標としては、載距突起と舟状骨中央が同じ高さに位置し、舟状骨中央・内側楔状骨中央・第1中足骨底中央・第1中足骨頭中央が同一線上に並ぶ位置を正常としていきます。
特定の部位がそれより上方にある場合は「ハイアーチ」と判断し、特定の部位がそれより下方にある場合は「扁平足」と判断していきます。
これらを評価する場合は正確な触察スキルも必要となります。
▶母趾外反角
▶小趾内反角
動的機能評価
▶振り向きテスト
▶逆振り向きテスト
▶スクワッティングテスト
▶スクワット動作
▶カーフレイズ動作
▶歩行動作
足部・足関節の運動器リハ:徒手療法
足趾屈曲可動性への介入
足部牽引アプローチ
足づくり
背屈可動性への介入
長母趾屈筋への介入
下腿三頭筋ストレッチ
足部・足関節の運動器リハ:運動療法
下腿三頭筋ストレッチ
背屈筋群エクササイズ
足趾グーパーエクササイズ
タオルギャザーエクササイズ
足部8動作エクササイズ
腓骨筋エクササイズ
後脛骨筋エクササイズ
カーフレイズ
ツイスティング
足底筋リリース
足部・足関節の運動器リハのまとめ